郵便局が民営化されたら田舎は
「花のことは花にきけ」 今年の生涯学習発表会に講師としてこられた辛坊治郎さんの色紙に書かれた言葉です。辛坊さんは読売テレビの解説員で、日本テレビのズームインスーパーという朝の番組で司会をされています。
マスコミの世論への働きかけ
郵政民営化法案が7月5日、衆議院でわずか5票の小差で可決したことから、翌日の朝ニュース番組をみていました。たまたま辛坊さんの番組だったのですが、マスコミをつかった巻き返し、世論への働きかけを感じました。衆議院で5票差まで迫ったことは、国民の批判が非常に強いことを反映したものです。このままでは参議院での可決、法案成立は非常に厳しいという見方が圧倒的です。そのため、危機感を持った民営化推進をはかる側(日本の銀行業界とアメリカ資本)は、マスコミを使った世論への働きかけをすぐに始めたというところです。
辛坊治郎さんは、民営化=良いことという前提に立っているような発言で、このままでは民営化が危ういと言っているようでした。
この番組をはじめ、次々と郵政民営化法案のゆくえがマスコミで論じられています。その多くは、民営化=賛成 を前提に、法案が可決か、否決かという議論に終始しています。本来マスコミが行うべきことは、法案に従って郵便局を民営化したら国民にとってどんな影響があるか、どんな利点があり、どんな弊害があるか、具体的に現実的に示すことでは無いでしょうか。
田舎で郵便局の果たす役割
萩市内にはたくさんの郵便局があります。過疎化が進むこの地域の中で、郵便局が果たす役割は、都会に住む人びとよりも一層重要です。民営化でリストラが進むことは間違いありません。だから、たくさんの自治体議会で民営化反対の意見書や決議が挙がったのです。その数、 年末までに、 都道府県議会中 都道府県(93.6%)。 2950市町村議会のうち2605市町村議会(88.3%)。
もし弥富から郵便局が無くなったら、高齢者は年金を受け取ることができません。日々の貯金の出し入れができません。郵便が届くのが遅くなります。独居老人は1日に誰とも話をすることがない日々が続くかもしれません。地域の情報も届きません。
農協があるじゃないと言う人もいます。でも金融窓口開設には3人以上の職員配置など厳しい条件がつけられました。また、減損会計も導入され、収益の見込めない施設・土地は損失計上しなければなりません。農協も収益性の低い過疎地では、存続できないように網がかけられているのです。弥富といわず阿武・萩の農協の支所がいつなくなるか分かりません。協同組合でさえそういう状況ですから、郵便局が株式会社になれば、一層、利潤追求、採算性が優先されます。過疎地の郵便局の廃止は火を見るより明らかです。過去の民営化で国鉄も電電公社も田舎から去って行ったことは記憶に新しい事実です。
誰のための民営化なのか
何のため、誰のための民営化なのか。民営化で誰が一番利益を上げ、誰が不利益をこうむるか。枝葉だけにこだわって見るのではなく、その本質、根幹は何なのかを見極め、国民に知らせるのがマスコミの義務です。政府のお先棒かつぎでは、戦前と同じ過ちを繰り返します。
民営化で過疎地の郵便局がどうなるか、住民がどんなに不便になるか、実際に現地に出て取材し、ことの本質を現実的に示してもらいたい。草深い田舎の事情を伝えるのもマスコミの仕事。辛坊さんには、花ならぬ「草のことは草にきけ」という言葉を贈りたい。